甲状腺手術と辛い安静6時間

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甲状腺の手術の日

「予定の1時間以上も早まっちゃいましたよー」そう言って、13時すぎには部屋担当の看護師さんがお迎えにきてくれてた。点滴をしたまま、点滴スタンドと一緒に手術室まで歩いて行く。

自動ドアが開くと、手術担当の4人の看護師さんたちに出迎えられる。名前を聞かれ、告げると、高いベッドに階段を登って横になるように言われる。かなり細くて狭いベッド。聞いてたけど、ほんま狭い。

横になる前に手術着の肩のボタンを全部はずされて横になる。こんなところにボタンがあったんか!知らんかったわーと言いながら横になると、落ちないようにとバンドをされてベッドごと運ばれていく。

「このベッドほんと狭いねー」というと、看護師さん、身を乗り出しながら「先生がこうやってすぐ近くで手術できるようにねー。あの先生、お腹つかえちゃうから」と笑う。「先生、痩せなあかんのちゃう?」と笑っていうと「言っても全然きかへんからなー」と看護師さんも笑った。

手術室らしきところに着くと、周りを囲まれて、なんやかやと器具をつけられる。酸素マスクで鼻と口を覆われてしばらくすると、なんかぼーっとして眠くなってくる。。なんか眠い、というと、もう薬入ってるから〜という声が…

………

なんとも言えない、ぽわ〜んとした感覚、名前をよばれて、あ、夢を見てたんだ、と気がつく。
「終わりましたよー」「傷口小さいよ、きれい」「手足動きますかー」「わかりますかー?」「あ、はい」「じゃ、リカバリー室に行きますねー」ガタゴトとベッドごと運ばれていく。1時間と聞いてた手術、無事終わったんだなあー、あーよかった。

カーテンに囲まれたリカバリー室に着くと、またなんやかやと器具をつけられる(点滴している左手の人差し指に酸素計、右腕に血圧計、心電図計も付いていたんやと、後で知る)。

そうか、これから6時間安静なんだね。無事に手術が終わったんだ、という安堵も束の間、6時間起きられない、そう気づいた瞬間、なんともいえない絶望感に襲われる。いや、無理だ、無理!6時間もこの体勢で寝てられない!い、いやだー!!!と叫びたくなるのを抑える。

「寝返りはできますからね〜」と、頭を持ち上げない寝返りの方法、膝を立ててお尻をずらして向きを変えることを教えてくれる。「頭は絶対に持ち上げないでねー。寝返りはどっち向いてもいいですからねー」

長時間押さえつけられ続けたように後頭部が痛い。だから横を向きたいが、尿の管が入っているせいか、足を動かすとちょっと痛い。しかも、喉から真っ赤な血が流れる管が出てるし、喉が気になって真横を向く勇気もない。

6時間って、6時間って…長すぎるー無理だー…

途方に暮れつつ、小さく聴こえるジブリの映画音楽に集中してみる。これはトトロ、もののけ姫、これは、ラピュタ、ナウシカ、うーんこれは、、ハウルかな?
ううー。またトトロ、うーん、いったい何回目のトトロやねん!

カーテンの向こう、右隣の患者さんに話す看護師さんの声が消える「2時間たちましたからねー。お茶飲んでみましょうか。」

そういえば、口も喉もカラカラだ。2時間経ったらようやくお茶が飲めるのか…それに、なんかおしっこもしたい。血圧と体温を測りにきてくれた看護師さんにダメ元で「トイレに行きたい」と言ってみる。

「尿の管が膀胱に直接入って流れてるんですけどねー。抜けないように、小さく膨らませたものが入ってて、それが刺激になってトイレに行きたい、って感覚になる人もいるんですよー。でも流れてますから大丈夫ですよ〜」そうか、おしっこの管って膀胱に直接そうやって入ってんのか、なるほどー。そう聞いたら我慢できる気がしてきた。

「喉がからから」と伝えると、もう1時間くらいしたらお茶が飲めますから、と。
うえーん、まだ1時間しか経ってないってことー??観念して少し眠ろう、いや眠れんぞ、うーん、眠ろう、いや眠れん!!

そうこうしているうちに1時間経ったらしい。「お茶飲みますかー?」と看護師さん。寝たままお茶を飲ませてもらう。

「痛み止めは点滴に入ってますか?」と聞くと「手術の時の点滴に入ってたけど、今は入ってないから徐々にキレてきますー。起き上がったらロキソニンが飲めますよ」と。どおりでだんだん喉のあたりに違和感が出てきたはずだ。そのうち痛くなってくるんやろなぁ〜涙

仕事が終わってダンナがきてくれた。「大丈夫?」「うん。でも何時間もこのままなんて無理だー。耐えれんー」と泣き言を言ってみる。が、鼻で笑われた。どうにもならないわな、当たり前だが。

左側にいたダンナに、「ここにもう一つベッドが入るから一旦出てください」と声がかかる。私の後に手術が終わった人が入ってきたらしい。このリカバリー室、いったい何人患者がいるんだ??私の両側に1人ずつ、足元にも何人かいる。(あとで聞いたら全部で7人だった!)

仕方なくジブリの音楽に集中してると、うつらうつらしてくる、が、その度に、パタパタという足音。ガタガタものを動かす音、ピーピーなるタイマー、ナースコールの音楽。こんなんで、眠れるわけないやないか!

それでもなんとかうつらうつらしていたら、看護師さんが血圧と熱を測りにきては目が覚める。何回目かのときに、なんや、こんなでっかい看護師さんいたっけなぁと思ったら、執刀医の先生だった 笑。喉の傷を見て無言で去っていった。

そして、先生は隣のカーテンに入っていった。「ちゃんと終わりましたからねー。まあしっかり眠ってください」とか言ってる!こんなんで眠れるかい!!と心の中で悪態をついた。ごめん、先生。

まんじりともせず、本当に流れているのかどうかもわからない時間。。。起き上がることもできず、眠ることもできず、時計すら目にできず、ただ、ただ、ひたすら時間がすぎるのを待つ…辛い、辛すぎるーーー。

ダンナが「帰るねー」と言いに来た。やっとこさ19:30。6時間安静、と文字だけ見たときに、これほどの苦痛になるとは思いもしなかった!

右隣から、気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。なんでこんな物音の中、そんなスヤスヤ眠れるんだろう?目覚めへんのかな? ダメ元で、その寝息に合わせて自分も息をしてみる。同期して眠れるかな?いや、そんなんで、ねむれるかいな!自分で自分にツッコむ。。。虚しい。

看護師さんが右隣の人に声をかけている。「起き上がる時間ですよ」おーようやく!!ってことは、私もあと少しだ!

ん?それでも寝息が聞こえている。起きてへんのか?いや隣の人は起きてるみたい。寝息はもっとさらに向こうから聞こえてるんだな。

「機械とりますねー」「靴下とりますねー」「ショーツは自分ではいてくださいねー」「立てますかー?」とか聞こえてくる。そんないっぺんにできるのかなぁと思ってたけど、あっという間に「トイレこっちですー」と、トイレに歩いていく音。
そんなやりとりの向こうから聞こえる寝息はやっぱり一定。いや〜よー眠れる人やなぁ。そのどこでも眠れる能力、私も欲しいよ。

だんだん喉の傷口の周りが痛くなってくる。。痛い、気のせいではないよな、痛い、私が起き上がる番はもうすぐなのに、まだかまだか…痛いからナースコール押そうか?どうしようか?もうあかん、押すぞ!

…と思ったら看護師さんが入ってきた。「起き上がりますよー」
やった!!ようやく!!

待ってました!とばかりに、思わずにっこりしてしまう。「機械外しますねー」気づいていなかったけど、胸の下にもなんやら貼ってあったようだ。心電図用か。

「寝たままでいいですよー靴下ぬがせますねー」「ショーツとパジャマのズボンを膝まで入れますねー」と履かせてくれる。
「紙パンツは切りますねー」おお!なるほど、切るんだ!横からチョキチョキ切ってくれたので、膝まで上がっていたショーツとズボンはお尻を浮かせて寝たまま履けた!そうかこういうことか!

そのあと、ベッドの右側に足を下ろし、右ひじをつきながら体を起こす。「気分悪くないですかー?」
たしかに悪い。おえっとなったので、受け皿をくれたけど何も出なかった。
体を拭きますねーと熱いタオルで背中を拭いてくれる。「消毒液がついてるんでねー、ほら」と見せてくれたタオルは黄色と黒に染まっていた!「わあ!こんなに?!」体の前は自分で拭いたけど、こっちはきれいなもんだ。

それからパジャマの上を着て立ち上がってみた。平気。トイレの場所を教えてもらってトイレに入る。おしっこしたかったけど、大して出ない。ちゃんと管でながれてたんだね。

ベッドに戻って痛み止めをもらう。眠剤は消灯前にまた持ってきますね、と。うーん、一緒にくれないのー?夜中早くに目覚めちゃうから、眠剤は遅めに飲んだ方がいいと。

消灯になったらやっと眠剤も持ってきてくれた。昨日、これでかなりぐっすり眠れたから、これさえあれば、ここでも眠れるはず!

しかし、まだのどが痛い、痛いし眠れない。あ、でも尿の管が外れたから横向きも楽にできるようになった気がする。真横にむいたらいい感じ。

心の中で叫んだ。
「今こそ効くんだ!効けー!レンドルミンとロキソニン!二つまとめて私を眠らせてくれー!!」

……

目が覚めた。横向きのままだ。おーー。眠っていたらしい。夜中っぽい。トイレに行こう。うーん、喉が痛いし、また眠りにつくのは難しそうだ。

トイレから戻り、看護師さんのところに行って薬が欲しいと言う。「もう3時だからロキソニンだけね。眠剤を今飲むと起きれなくなるから」

おーー。3時まで眠れてたんだ、わたし!ちょっと嬉しい。横になって目をつぶったら程なくして電気がついた。朝6時。やった!朝だ!部屋に帰れる!

そして、朝食前には個室に帰ってこれましたー!やれやれだった。朝食もちゃんと食べられる!美味しい。あーよかった!

朝食後、朝のストレッチ指導に来てくれた看護師さんに、6時間安静が辛すぎたことをつらつらと伝える。すると「昔は12時間だったんですよー」

げ!!!

12時間なんて、ぜーーーったい無理!!現代に生まれて、ほんまによかったーーと心底思ったmimiでした!

ちゃんちゃん!

後で思い出しけど、この安静時間、うつらうつらしながら見ていた夢の話はこちら
手術後の夜、夢の中のムロツヨシ